肉厚
部品の公称肉厚を規定することは、その成形性、性能およびコストを決定する最初のステップです。
寸法設計
射出成形部品の一般的な推奨肉厚は、形状のサイズ、使用材料、および要求される性能によって異なります。ここでの性能とは、以下の分野における所望の特性を総括しています:
- 力学特性 – 強度および剛性。
- 衝撃 – 機械的エネルギーの吸収能力。
- 絶縁 – 熱的または電気的。
- 難燃性 – 材料の着火しやすさ。
一般的に、肉厚は0.5mmから4mmの範囲となります。状況によっては、これよりも薄い、あるいは厚い肉厚が使用されることもあります。基本設計ガイドラインとして、肉厚はできる限り薄く、かつ均一に保つことが推奨されます。設計上やむを得ず肉厚に違いを持たせる場合は、図1に示す通り、徐々に変化させることが重要です。
一般に、既存の金型キャビティから金属を除去するのは比較的容易ですが、金属を追加することは困難(高コスト)であり、場合によっては不可能(新たな金型製作が必要、高コスト)となります。肉厚設計の観点から見ると、肉厚は大きくできますが、小さくすることはできません。したがって、判断に迷った場合は、厚くするよりも薄めに設計することが推奨されます。この原則は「steel safe」または「metal safe」設計と呼ばれます。
肉厚の影響
公称肉厚の選定は慎重に行う必要があります。これは、構造性能以外にも肉厚が次の点に影響するためです:
- 金型充填性 – 肉厚が熱可塑性樹脂の流動特性に適合していない場合、金型を完全に充填することが困難となる場合があります。
- 部品重量 – 当然ながら、肉厚が大きいほど部品重量は増加します。
- 冷却時間 – 肉厚が増すほど、射出成形後の冷却時間が長くなります。
- 部品コスト – 上記要因に加え、部品の体積増加および成形サイクルタイムの延長により、コストが上昇します。
- 寸法精度 – 部品内部で冷却速度に差が生じる(特に肉厚が厚いまたは均一でない場合)、これにより成形時の残留応力が発生し、型から取り出した後に反りとなって現れます。
- 部品性能 – 厚肉部では肉厚内部にボイドが生じることがあります。
- 外観性 – (局所的な)肉厚が過大な場合、不均一な冷却速度によりヒケ(図3参照)が発生することがあります。
材料別推奨肉厚
推奨される肉厚は、材料の流動特性にも依存します。以下の材料関連要因が流動挙動に影響を与えます:
- 成形温度における粘度。
- 結晶化度および結晶化速度。
- 繊維充填剤や他の添加剤の有無。
特定材料の流動特性を把握する第一手段として、スパイラルフローカーブが参照できます。これにより、所定の肉厚と射出圧力に対して達成可能な最大流動長の相対値が分かります。Envaliorで広く使用されている材料のスパイラルフローカーブは弊社のPlasticsFinderでご覧いただけます。
肉厚と材料粘度
溶融状態のプラスチック材料の流動性は粘度によって表されます:粘度が低いほど、溶融状態での流動性は良好です。これは、極薄肉部品を成形する場合に有利です。
EnvaliorのAkulon (PA6 & PA66)およびStanyl (PA46)製品ラインナップには流動性を改良したグレードが複数用意されています。高流動性は以下の利点につながります:
- 薄肉部品の金型キャビティ充填性の向上。
- 成形サイクルタイムの短縮。
- Mol低温での成形や、低トン数プレスの使用が可能です。
- 表面品質の向上。